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夢中です

『優しい時間』の長澤まさみに夢中です。友達になりたいです
。(BROKENSPACE 寺田友)

「とんかつダイアリー第四回後編」
 
ブランキーの勢いは加速した。知らない誰かを笑わせるために(受験勉強を遅らせるために)ブランキーの脳細胞はフル回転した。電気教の信者として。さあ、格好いい気分のアイツを笑いとばせ!個性派気取りの彼女を笑いとばせ!そうして高見の見物気取りの自分をワラエ。ブランキーのハガキはしばしば公共の電波をジャックした。可愛いともてはやされた八重歯は狼のようにとがり、鼻はテングのように伸びたが本人はそれに気付かずにいた。小学生がようやく宿題の存在を思い出し焦りだすころ、やかましく存在を主張してきたセミが土に帰るころ、しかしブランキーはまだ参考書を開こうともしなかった。

間違い電話以外でほとんど鳴る事がなかったブランキーの電話がけたたましく、本来の声を取り戻し、彼をを午後の眠りから呼び覚ましたのは10月のある日だった。受話器の向こうから聞こえたのは懐かしい声だった。「もしもし。元気なの?予備校から連絡あってね。アンタ殆んど行ってないらしいじゃないの?テストも受けてないから進路の相談もできないって。ねえ。どうしたの?何かあったの?何で学校行かないの?」テングっ鼻の狼面をかぶったブランキーは心優しき母親から生まれた団子鼻の八重歯のかわいい凡人に戻っていた。

「いや、あの、あれ、なに、風邪をひいたんだよ。しかもさ、いや、あの、あれ、なに、本格的なあれをさ。本当だよ、今だって頭痛いんだ。鼻は出るしサ。だからちょっと予備校休んでるんだ。だって今休まないとさ、本番で頭痛かったり、鼻出たり、あれだったり、なにだったり。」受話器の向こうから予想に反して優しすぎる声が帰ってきた。
「分かったよ。そうかと思って心配したんだよ。今月少しだけ多く仕送入れるから鍋焼きうどんでも食べなさい。早く治すんだよ。」

10月というのは受験生からすれば、もはや追い込みの時期だ。しかしブランキーは(いやテラダユウは)ついに参考書を開いた。始める事だ。今のオレに誰かを笑わせる権利も笑う権利もない。まして自分自身を批評するスタートラインに立っちゃいないだろ?え!ブランキーさんよ!テラダユウさんよ!

冬が過ぎて春になった。テラダユウは何とか大学生になった。日本中の人にアンケートをとっても8割は、その名前すら知らないであろう三流大学に。それでも僕は嬉しかった。風邪もひいていないのに食べた鍋焼きうどんがなければ、自分はどうなっていたのだろう。ふてくされた演技で「ダメ大学だけど受かったよ。」と電話したら両親は随分と喜んだ。

ブランキーシジェット浪越は大学生になった。しばらく聴かなかったラジオに投稿しだしたのは桜も散りきる頃だったか。ペンネームも心機一転「ブランキー風呂釜ジェット」に換えて。

しかしブランキーのハガキは二度と読まれる事はなかった。

 


2005年3月3日/BROKENSPACE 寺田
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